「縁とゆかりは作るもの」地方創生のカリスマ3人が語る、人が集まる地域は◯◯だ!

グリーン

written by ダシマス編集部

仕事(work)と休暇(vacation)を組み合わせた造語である「ワーケーション」。旅先などで仕事をする新しい働き方でのひとつとして、働き方改革を推奨する企業などを中心に広まっています。

今回は、ワーケーションを独自の人事制度の「WAA」として取り入れたユニリーバ・ジャパンの島田由香さん、総務省地域力創造アドバイザーとして地域と人をつなげる活動をする吉弘拓生さん、Fledgeを運営するインビジョン株式会社のCEO、吉田誠吾のトークセッションをお届けします。

お酒が大好きな3人は、しばしば飲みの席でも「地方創生」について熱く語ることがあるのだとか。一体どんな話が聞けるのでしょうか?

吉弘 拓生 (よしひろ たくお)

吉弘 拓生 (よしひろ たくお)

総務省地域力創造アドバイザー。一般財団法人地域活性化センタークリエイティブ事業室長兼企画課担当課長。2010年福岡県うきは市役所に入庁。2015年4月群馬県下仁田町副町長に就任(史上最年少)。2019年4月より現職。スーパー公務員として全国各地で活動を広げている。

島田 由香(しまだ ゆか)

島田 由香(しまだ ゆか)

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社 取締役人事総務本部長。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一貫して人・組織にかかわる。日本の人事部HRアワード2016 個人の部・最優秀賞受賞。

吉田 誠吾(よしだ せいご)

吉田 誠吾(よしだ せいご)

インビジョン株式会社のCEO兼カンパニーカルチャークリエイター。「一般社団法人 移住・交流推進機構(JOIN)」の特別法人会員。人材ビジネス歴18年目・経営歴11年目・2児の父親。

「アクション」と「パッション」を持つ地域

ー今日は、「地方×働き方」というテーマでゆるくトークしていただければと思います!島田さんと吉弘さんは普段から交流があるということですが、どういったお知り合いなのですか?

島田:ちょっと待って!堅い雰囲気じゃつまらないから、今日はあだ名で呼び合いましょう。吉弘さんはたくちゃん、吉田さんはせいちゃんで。

吉弘:じゃあ、島田さんのことはゆかちんで行きましょう!(笑)。


僕とゆかちんはよんなな会」と言って、47都道府県の地方公務員と中央省庁で働く国家公務員をつなげることを目的としている会で知り合ったんですよ。僕はそのとき、ワーケーションの推進を目的に参加していました。

島田:私は、色んな地域にコワーキングスペースを作って欲しいと思っていたんです。ユニリーバに導入したWAA(Work from Anywhere and Anytime)という制度の「Anywhere」が特に地域創生と親和性が高いのではないかと気がついたのがきっかけですね。

そこに行って仕事をするだけではなく、地域の課題の解決にも協力をする。そういう提案を自治体の人にしていて、そんな話でたくちゃんとは繋がりました。

吉弘:働き方改革が進み、近い将来、多拠点で働くスタイルが定着すると予測しました。同時期に、うきは市の指定文化財をコワーキングスペースとして活用する地方創生プロジェクトが掲げられ、アドバイスを求めたところ意気投合したんです。ゆかちんの行動力に感激でした(笑)。

江戸後期に建てられた、何十畳もある大きな部屋のあるお屋敷で、これまでは見学用公開施設として運営していました。そこにインターネット等を整備し、働く場所としての機能UPを図ったんです。

島田:うきは市の市長さんは行動がとても速くて、新しいことに対してもフレキシブルで素晴らしい人です。

ー地域において対応に速さがあるのは大事なことですか?

島田:地域の発展にはアクションが速くてパッションがあることが一番大事だと思います。今は「地域 de WAA」と言って、全国6つの自治体と提携してワーケーションをやっていますが、その自治体すべてが共通して持っているのがアクションとパッション。これがあると話が進んでいくのがとても速いんです。

ーWAAを利用する社員さんは増えていますか?

島田:社員のほぼ全員が1回は利用したことがあります。今年の夏に始まった「地域 de WAA」に関しては今までに9人が利用していて、これから行こうとしている人もたくさんいます。

参加する社員も、地域への想いやパッションを持って行って欲しいですね。行ってきた人の「すごく良かった」をいう感想を聞いて、また行きたい人が増えていくというのが一番理想です。

誇りを持ってもらえる地域に

ー地域に興味を持つようになったきっかけをそれぞれ教えていただけますか。

島田:私の場合は、東京生まれ東京育ちだからこそ地域の良さが勝手ながら輝いて見えるというか。昔は休みの日には海外旅行に行っていたんですが、地域へ行くようになってからは、野菜のおいしさや人の魅力に気がつきました。

一次産業よりも、二次産業のほうが高度で文明的で…っていう無意識に自分が勝手に持っていた思い込みにも気がつきました。一次産業がない限り食べることはできない、その衝撃が大きくて地域に行くようになりました。

吉田:僕は父親の実家が北海道なんで、小さい頃はキャンプによく行っていてそれがすごい楽しかったんですよね。その影響もあってか今も自然に触れるのが好きで、毎年家族で西表島に行くんです。民宿には島のことを何でも知ってるおばあちゃんがいて、海で釣った魚をそのまま海で捌いて食べさせてもらったり、そういう体験ができるんです。

自分で食べる物をとるとか、育てるってすごい大事な体験だと思うんですよね。で、自分の死ぬまでにやることリストに「猟銃の免許を取る」っていうのが加わりました(笑)。

島田:私も西表島には、昔の同僚のご両親がやっている宿があって子供が小さいときには毎年行っていました。温泉もあるし、その近くの海はすっごくきれいなんです。

ー地方に知り合いがいるって大きなことですね。

島田:あの人にまた会いたいって思うのが原動力になったりしますよね。「移住」ってなると、すべてを手放して行くことになるのでちょっと重たいじゃないですか。だからまた行きたい場所をたくさん見つけて、まずは多拠点からという考えでも良いかもしれないですね。

吉田:事業所を地方に増やすことを考えているんですが、古民家って80万円くらいで売ってたりするんですよね。そこにwifiを通せば事業所にもできるし、多拠点という考え方をすると働き方や暮らし方の選択肢は広がりますね。

吉弘:そう!地域の可能性は無限大で選択肢や夢も広がりますよね。

以前は、とにかく、都市部の人に来てもらうことしか考えていなかったのですが、住民に近い立場で声を聞くうちに、とにかく移住を「お願いする」のではなく、何度か訪れてもらう中で「納得」するというか、第二の実家のような場所になれるのが、理想的だなと思うようになりました。そのためにはまずは地域に住んでいる人が、”住み続けたいまち”になることが大事だと感じています。

ーそれはどうしてですか?

吉弘:ライフスタイルの変革などもあり、自分が生まれ育った地域に愛着や誇りを持つきっかけがないことも多く、また、UIJターンするきっかけやその仕組みが整っていないところが多いですね。地域の若い人がいつか戻ってきたいと思えるまちにするにはどうするかという課題があるんですよね。

僕は福岡県出身ですが初めての東京勤務で、「情報」、「人」、「コト」などあらゆる最先端のことが集まってくるという環境や便利さを痛切に感じています。だからこそ、東京で得たものを活かせる場があると、もっともっとワクワクする社会になるんじゃないかと。

島田:統計上も東京には20代の女性が増えていて、地域から東京に来て結婚や出産をされて戻らない人が多いことが課題になっていると知りました。だから、出ていかない何かと、来ても戻りたくなる何か、が必要だと地域の人たちとよく話しています。

吉田:色んなものが東京に行かなくても手に入れられるようになればいいのかもしれませんね。 

魅力的なコミュニティを作り、発信する

ー人が集まる地域を作るにはどうするのが良いのでしょうか。

吉弘:人が来るところに人が集まるんですよね、だからむりやり人を集めるのではなくて、まずは出ていく人に戻ってきてもらえるようになるのが大事です。外の世界を見た上で、帰る場所や心のより処として地域がどう存在するかどうか、これは大きいです。

魅力のある仕事があるかどうかではなくて、仕事がないことはない。圧倒的な人口減少社会であらゆる産業が人手不足。そういう時代です。東京でスキルをつけるのもありだと思います。たくさん吸収して、その後、地域に目を向けてもらえれば良いですよね。

吉田:好きなコミュニティを作ることが大事だなと思っていて、現実ではそうでもないコミュニティに我慢して入っている人がけっこう多いんですよね。

だから、地域にもまずは魅力的なコミュニティを作ることが大事で、コミュニティの存在を知ってもらうためにはノリノリで発信することですね。

うちは「働くエンターテインメント」を名乗ってるから、そういうコミュニティを地域の子どもたちにも楽しんでもらいたくて、エンタメ感を持って作っていきたいなと思います。

島田:私はやっぱり、知られるとか知らせることが大事かなって思っています。こんな素敵な人や場所、体験があるんだと何かで知ることがそこへ足を運ぶひとつのきっかけになりますからね。

誰が知らせるか、どんな人が良いと言っているか、これってけっこう大事なことで、且つ戦略的に起こすこともできると思っています。

そして来てもらった人にまた行きたいと思わせるには、またあの人に会いたい、そう思える体験をしてもらうのが良いと思います。やっぱり人なんですよ。縁もゆかりもないってことは絶対にないんです。それは作るものですから。

取材を終えて

人が集まる地域には行動力や情熱、魅力的なコミュニティ、また発信力などさまざまな要素があるようです。
そしてなにより、自分自身がワクワクするようなつながりを広げていくことが、すべての原動力になるのだと、3人の話を聞いていて感じられました。
移住や多拠点生活に興味を持ったら、まずは気になる人やコミュニティを見つけに行くのが良いかもしれません。
地域で働くというメリットについてもっと知りたい方は、ぜひこちらの記事もご覧ください!

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