キャリア相談をもっと身近に。つながりと仕事を創る『キャリコンサロン』って何?

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written by ダシマス編集部

国家資格であるキャリアコンサルタント。政府は、労働者ひとりひとりのキャリア形成の支援に力を入れる方針を示し、2024年までに10万人の登録を目指しています。

現在その登録者は全国で5万人を超えているとのことですが、キャリアコンサルタントの実際の活躍現場とは一体どういったものなのでしょうか?

今回は、自身もキャリアコンサルタントであり、キャリアコンサルタント同士のコミュニティでもある『キャリコンサロン』の創設者、塚田亜弓さんにその実態を伺いました。

塚田 亜弓(つかだ あゆみ)

塚田 亜弓(つかだ あゆみ)

キャリアコンサルタント。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。2017年に人事顧問(採用・教育定着・労務支援)を行う会社『HRラボ』を立ち上げる。キャリアコンサルタントのためのコミュニティ『キャリコンサロン』を創設し、キャリア関連イベントを毎月開催。厚生労働省キャリアコンサルタント更新講習の認定講師としても活躍。

“キャリア迷子”を減らし、楽しく働ける人を増やしたい

ー近年よく耳にする『キャリアコンサルタント』というお仕事は、具体的にはどういったことをされているのでしょうか?

塚田:キャリアコンサルタントとはキャリア相談を行う専門家で、平成28年の4月に国家資格に認定されました。企業、大学のキャリアセンターやハローワーク等の公的機関、人材紹介会社など活動領域は多岐に渡ります。

では、キャリア相談とは何かというと、職業や職位、昇給、昇格など出世のイメージをする方も多いのですが、ここでいうキャリアとはもっと広い意味で、生涯、生き方、人生そのものです。

ー生き方や人生、となるとかなり幅広い相談内容になりそうですね。

塚田:「転職したい」など悩みが顕在化している方もいれば、漠然と将来が不安で、これから何をすればよいのかわからない、という人も相談に来ます。

新型コロナウイルスの影響で働き方が変わったという方も多く、相談者の年齢や職種は幅広くなっています。毎日出社が当たり前であった世代の方々についても、価値観の変化を迎えているなと感じています。

ー塚田さんが、キャリアコンサルタントになるきっかけはどんなことだったのでしょうか?

塚田:さかのぼると学生の頃、文系か理系かどちらを選択するかに始まり、進学や就職、人生の岐路にぶつかるたび、自分には何ができるのか、自分は何がやりたいのか、と悩む、まさに“キャリア迷子”を経験してきました。そのときに相談できる人がいればよかったな、いつか同じように悩む人を減らす仕事がしたいと思ったのがきっかけです。

前職は、コンサル系のベンチャー企業でわりと忙しく、メンタルに不調をきたして、相談できずに辞めていく同僚を多く目の当たりにして、もっとイキイキと自分らしく働く人を増やしたいと思うようになりました。

そのためには、自分の好きなこと、得意なことを仕事にするほうがよい。必要なのは、個人が自分のことをよく知ること、そして会社が個人の特性を見極めて、個人が活躍する組織を実現させることです。その必要性に企業側が気づけるよう、働きかけたいと思いました。

ー個人が活躍する組織を実現させるために、今どんな活動をされているのでしょうか。

塚田:企業の中にキャリア相談室をつくるという活動をしています。そのためのガイダンスなども行っています。

会社が個人と向き合い理解することで、イキイキと働く人が増えれば、組織への貢献度も上がり生産性も向上します。

会社、働く個人、社会の三方よし。これが企業内にキャリア相談室(キャリア相談制度)を導入するメリットです。

このお手伝いをできることが、私がキャリアコンサルタントを続けている理由でもあります。

かたち上キャリア相談室をつくった企業はたくさんありますが、実際には稼働していないところも少なくありません。

将来的にはキャリアコンサルタントの数を10万人にしようという国の方針もあり、キャリアコンサルタント自体の数も増えていくので、活動の場としてキャリア相談室の導入も進めることができればと思います。

心地よく働ける環境に必要なのは、本音を話せる場所

ーキャリア相談をした個人や企業側からはどんな声がありますか?

塚田:同僚には話しづらい社内での悩みも、キャリアコンサルタントという第三者にだから安心して話せるという声があります。あとは、職場が男性ばかりなので、女性の相談相手ができてうれしいと言われることも。利害関係なく本音で話せる存在があることは働く環境に必要なのだと思います。

企業からは前向きに仕事をする人が増えた、残業が減ったという声もあります。仕事や職場に対する自分の認識が変わって、納得して働けるようになったり、自分の成長をイメージすることができて、やりがいを持つことができたという方が多いかなと思います。

ーどういったかたちで、相談にのってもらえるのでしょうか?

塚田:キャリアコンサルタントの仕事は、相談者との対話を通じて、これから目指したい方向を一緒に考えていくことです。「じゃあ、こうしましょう」とこちらから提示するわけではなく、問いかけをしながら、相談者のお悩みや思考の整理をサポートしていきます。

必要に応じて、職種のキャリアパスや助成金・補助金の活用など、具体的な一歩を踏み出すための情報提供も行っています。

会社と個人の間に入りますが、立場はあくまでも中立なので、やみくもに離職を引き止めたり転職をすすめたりすることはしません。

ーキャリアコンサルタントに必要な能力はなんだと思われますか?

塚田:一番は傾聴力だと思います。とにかく相手の話をしっかり受け止めること。これまでの仕事は、コンサル業として提案する機会や採用選考官として面接する機会が多かったため、つい結論を急いでしまったり、質問攻めにしたくなってしまったり、カウンセリングの学び始めはとても苦労しました。ひたすら相手の言葉に耳を傾けることは、シンプルですが、とても大切で難しいことだと思います。

もうひとつ大事なのは、職種の理解だと思っています。

たとえば、経理の仕事をしている方が相談に来た場合、一般的な伝票整理や入出金管理、決算表や貸借対照表の作成、帳簿付けなど、どこまで担当されているのか。会計や財務にも関わっているのか、など。

現在のお仕事内容を聞いて、具体的な業務のイメージをできなければ、相手に心を開いてお話をしていただけませんし、適切なアドバイスもできません。

でも、実際にはこの“職種の理解”が足りていないキャリアコンサルタントも多いなと感じています。そこを補うことも目的のひとつとして、『キャリコンサロン』を開催しています。

キャリコン同士がつながり、学び合うサロンを開催

ー『キャリコンサロン』とは、どういったことをされているのですか?

塚田:キャリアコンサルタントのスキルアップや独立、活躍の場を広げることを目的に集まり勉強をして、外部へ発信しているコミュニティです。

現在5万人いるキャリアコンサルタントが全員活躍しているわけではありません。資格をとっても働く場所がない、ということが起こっています。

こうした状況を変えるためにも、スキルアップをして自分たちで活躍する場をつくっていこう、という動きができればと思い、活動を始めました。

特に職種の理解を深めるために、現場に入った方の事例を元にディスカッションをしたり、各領域の専門家を招いてその職種についてお話いただいたりしています。

現在、全国で約130人が在籍しており、中にはこれから資格を目指す方や、資格は持たずにすでにキャリア支援に関わっているという方もいらっしゃいます。大半が会社に勤めていて資格を持っている方。もしくはそれを活かして今後働きたいと思っている方です。

仕事を共有する以外にも、同じエリアの仲間ができたり、ママ友ができたり、部活動を通して興味関心の近い仲間ができたり、参加者同士のつながりを持つことができてうれしいという声もあります。

キャリコンサロンの活動に共感し、一緒に学び成長できる仲間がどんどん増えていくとよいなと思っています。

ーキャリアコンサルタントとして活躍していくためには何が必要だと思われますか?

塚田:傾聴力や職種の理解といったベースのスキルに加えて、プラスアルファの強みがあることです。それがないと5万人のキャリアコンサルタントの中に埋もれてしまいます。

私の場合は、労働条件や賃金体系の構築など、「労務」が得意なので、会社の規則づくりや国からの給付金の活用など、情報を提供することができます。

そういった、“自分はここが強み”というものが打ち出せるとよいと思います。これは難関資格である必要はなく、趣味の知識であったり、子育て経験であったり、自分ならではの経験や個性を打ち出したキャリアコンサルタントになることが大事かなと思います。

「キャリア=人生」専門家への相談をもっと身近に

ー現在の活動を通して今後実現したいのはどんなことでしょうか。

塚田:キャリア相談をもっと当たり前にできる世の中になればよいなと思います。

こんな愚痴のような内容でもよいのだろうか、と躊躇される方もいるようですが、キャリアは人生そのものなので、今抱えている悩みごとがあれば、それはどんな内容でも立派なキャリア相談です。気軽に相談にきていただけたら嬉しいです。

話すことで整理できることも多いです。理想は、困ってから相談ではなくて定期的にお話をしに来ていただくことです。お医者さんといっしょで、定期検診のように来ていただける、そういう存在になるのが理想です。

会社の制度としてもキャリア相談室の導入がもっと広まってほしいので、そのためにも、キャリアコンサルタントというキャリア相談を行う専門家がいるということを知ってもらう必要があります。企業や人事担当者向けに、認知を広めるイベントも徐々に増やしています。

ー塚田さんにとって“キャリア”とはなんでしょうか?

塚田:生涯を通して、自分で積み上げていくもの。

それは、意図的につくることもあれば、時間が過ぎた後に自然発生的についてくることもあります。何かに取り組んだときに、どんな結果であれ、取り組んだことがキャリアとなって自分についてきます。私の場合は、取り組んだ結果が、次の機会のヒントとなっています。

キャリア相談は、自分のやりたいことを見つけることにつながります。キャリアコンサルタントが活動の場を広げることで、自分のやりたいことが実現できる人がもっと増えていくとよいですね。

 

▼『キャリコンサロン』についてはこちらから!
https://career-salon.jp/

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