世界中のより多くの人々のウェルビーイングに貢献する。コミュニケーションを変えることで組織の可能性を引き出す

ブルー

written by 斉藤彩

"個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ"というミッションの元、Working(働く)・Interesting(遊ぶ)・Learning(学ぶ)・Living(暮らす)のWILLの領域で事業展開を行う株式会社ウィルグループ。中期経営計画(WILL-being 2023)とともに、全社的な「ウェルビーイング」向上にも取り組んでいます。昨今特に注目が集まる同社のウェルビーイングへの取り組みについて2回にわたってお届けします。今回は、中心となって推進してきた人材開発部の鳥谷部大樹さんにお話をお聞きしました。

 

 

ーーー鳥のさえずりが聴こえますが、現在、鳥谷部さんは久米島にお住まいなんですよね?

2020年3月、住み慣れた東京から家族5人で沖縄県久米島に移住しました。サトウキビとパイナップル畑、バナナの木に囲まれた自宅オフィスで人材開発部の業務に携わっています。

 

ーーーまさに、ご自身でウェルビーイングな働き方を体現されてますね。普段どのように過ごされているんですか?

平日は毎日4:30に起きて読書をした後、家族と朝食をとります。その後三女を保育園へ送ってから9:00に始業。オンラインで業務を行い18:00には終業。保育園へお迎えに行ってから、夕食も家族ととります。土日は図書館や公園、海に行ったり、お買い物などに出掛けたりしますね。

▼鳥谷部さんの久米島移住のお話はこちらの社内報「BIG SMILE」でも紹介されています
https://big-smile.willgroup.co.jp/articles/739.html
 

ビジョンを支え続けてくれるウィルグループとの出会い

ーーーどのような学生時代を過ごされたのですか?

2年間浪人して大学に入りました。受験勉強の経験をムダにしたくなかったので、3年半くらい塾講師をやっていて、およそ1500回の授業を担当しました。
教える仕事に興味を持つようになったのは、この頃からだと思います。

そして2007年に新卒としてウィルグループへ入社しました。


ーーーなぜウィルグループへ?

会う人とのフィーリング、コミュニケーションの気持ち良さに惹かれました。

当時はまだ今の10分の1くらいの売上規模でしたので、これからいかようにでも未来が描けるなと。何かが固まってしまっている組織ではなく、自分で何かを作っていける、そのスペースが広い、ということも魅力でしたね。

また、教育に興味があった私に「鳥谷部君が培ってきた教育の力を必ず必要とする時期が来る。一緒にやっていこう!」と情熱的に誘ってくれたことも大きな理由です。

 

ーーー入社後は人材開発のお仕事に?

いえ、最初は新規の営業を行っていました。悪夢の時代です(笑)
同期が成果を出していく中で、自分だけ全く成果が出せない。とてもつらい時期でした。

その時期を乗り越えてこられたのは、入社前から声をかけ続けてくれた現会長の存在が大きかったですね。今でも覚えているんですけど、当時のオフィスのトイレに僕が入るところ、会長が出るところで

「どんなにしんどくても自分の可能性を見限っちゃいけない、夢を持ち続けるんだぞ。」

と声をかけてくれたことがあったんです。ちょうど新卒の状況を耳にされていて、自分のこともご存じだったのではないかと思います。

あの言葉は今でもずっと心に残っていますね。

 

ーーーその後、しばらく営業のお仕事を?

ある時、営業として配属されていた事業会社が本社に吸収合併され、量販店のお客様先に出向になったんです。当社には社員でありながら現場に入り、派遣スタッフさんを現場でモチベートするフィールドサポーターという仕組みがあるんですけど、その先駆けです。

そこで、真逆の経験をすることになります。

今まで営業でなかなか成果が出せなかった自分が、お客様に商品を買っていただけるんです。フロア・店舗でもトップの成績を残せるようになって、自信を取り戻すことができました。

また、ウィルグループの社員でありながら別のカルチャーを持つ企業で働く、という不思議な体験が、働き方や生き方を見つめ直す時間になりましたね。

そもそも働くとは?ウィルグループはどのような価値を生み出しているのか?自分はどのように生きていきたいのか?などを考えるきっかけにもなり、僕にとってとても重要な経験でした。

 

ーーーどのような経緯で人材開発部へ?

出向先での気づきを一年間書き留めていて、本社に戻る際にまとめて提出したんです。原稿用紙150枚くらいのものでした。

後日、役員から内線がかかってきて「本を作ろう」「会社がお金を出すから、自費出版しよう」という話になりまして。

就活の面接のときに「物書きになりたい」と伝えていたのを覚えていてくれたんです。実は、2007年の入社直前にも自費出版したことがあります。これは塾講師での経験をまとめたものでした。入社前に役員にも配りました。

そういう僕の思いや取り組みを覚えてくださっていて、こういうかたちでビジョンを応援してくれるのか、と驚くとともにありがたく思いました。


そうして2010年の3月『販売をポジティブに』という本が完成しました。500冊作りました。社員だけでなくクライアントにも配布したり、ホームページにもPDFで無料ダウンロードできる仕組みを作ったりして、営業ツールとしても活用していくぞ、という全社的なプロジェクトに発展しました。

2011年10月「本で大切なことを伝えてくれたように、これからますます大きくなるウィルグループのたくさんの仲間に、大切なことを伝えていってほしい」そんな言葉をいただきながら人材開発部へ異動しました。

入社して4年半後、教育に携わるというビジョンの入口にも立たせてもらえたのです。


左:塾講師の経験をまとめた本(2007年3月)
右:量販店での販売員の経験をまとめた本(2010年3月)

 

コーチングと対話を通じてウェルビーイングを追求していく

ーーー当時からウェルビーイングに力を入れていたんですか?

2006年に「個と組織をポジティブに変革するチェンジエージェント・グループ」という今のグループミッションが生まれました。これはウェルビーイングのための学問である「ポジティブ心理学」の影響を受けているものです。

とはいえ、現場はウェルビーイングとは程遠かった、というのが現実です。

2018年7月、ポジティブ心理学の創始者セリグマン博士、私たちのミッションに影響を与えた張本人に来日していただき経営幹部が直接話を聞いたんです。そこから、「ウェルビーイング」という言葉が発信されるようになり、2019年4月には経営の最重要事項としてウェルビーイングを掲げるまでに至りました。力を入れ始めたのはそこからになります。
 

日本企業がもっとwell-beingを実現するために、セリグマン博士から教えていただいたウィルグループ主催の経営幹部向けセミナー。(左から池田会長、マーティン・セリグマン博士、鳥谷部)

 

ーーーウェルビーイングを掲げてから、どのような取り組みをしてきたのですか?

ポジティブ心理学の学習を全社的に進めました。それがウェルビーイングのためのメインストリームだと思いましたし、自分たちのミッションともつながっていると考えました。

人生はつくづく面白いなあと思うのですが、2006年頃からポジティブ心理学を学び続けてきて、最終面接では「いつかポジティブ心理学を活用して何かをやります!」と漠然と宣言したのですが、12年たってそうなるのです。

全国の拠点を回り、2年間で70回ほどワークショップを行い、およそ1000人超の社員にポジティブ心理学を伝えてきました。多くの社員がその価値に共感する声を聞かせてくれました。

しかし、私たちのウェルビーイングはこの2年間で何か変わったのだろうか?そんなことを冷静に考えてみたとき、自信を持てる手ごたえがなかった。方向性を変えないといけないな、そう思いました。

 

ーーーどのように方向性を変えたのですか?

自分に目を向けてみました。僕はここ数年、自分のウェルビーイングが少しずつ確実に上がってきているのを感じているのですが、それはどうしてだろう?右肩上がりのスイッチはあるのだろうか?そんなことを考えました。

かなり長い期間考えたと思うのですが、ふと思ったのは「コーチングを学んで、身につけたからかもしれない」そう思うようになりました。僕は2012年10月からコーチングを学び始め、2014年10月にプロコーチとしてのライセンスを得ましたが、思い返すとコーチングに出会ってから人生の質が変わったように感じるのです。

コーチングは対人支援の手段ですが、そのためには自分を見つめることがとても大切です。おのずと、自分の大切なことは何?自分はどう生きていきたいの?そんなことを考えるようになるのです。結果、人生の質が変わります。

そのとき「次はこれかもしれない」と思ったのです。これまではウェルビーイングのためにウェルビーイングに直接向き合ってきましたが、コーチングの学習と習得をもってウェルビーイングを高めていけるのかもしれない。 しかもコーチングは部下育成にもマネジメントにも営業にもいろいろなシーンで使えるので一石四鳥くらいを狙えるのかもしれないと考え、ウェルビーイングとコーチングを同時に学べる講座を開発しました。まずは影響力のある幹部へのコーチングのレクチャーをスタートし、コーチングの価値を知ってもらうために、100人以上の幹部にパーソナルコーチングも行ってきました。
 

コロナ時代以前のグループ横断で行っている集合研修の風景(左が鳥谷部)

 

ーーー具体的な成果や手応えは感じていますか?

僕自身がすぐに変わったのではないように、個人においても組織においても変化はゆっくりとしたものになるだろうと想像しています。しかし、確実に変化していくだろうと思います。

ありがたいことに、最近は
「今まで以上に人の話を聞くことができるようになれている気がする」
「部下が輝き始めている気がする」
「上司部下の関係が良くなっている気がする」
「〇〇さんのマネジメントに感謝している」
「自分の生き方が明らかに変わった」
という声を聞くようになりました。

もっと学びたい、もっと身につけたい、という声も増えてきています。これらは一人ひとりがコーチングの学習と習得に手ごたえを感じてきている証なのだろうと思います。

 

ーーーそのほか、ウェルビーイングのために注力されていることは?

対話のトレーニングです。

組織で仕事をしていくためには集団としてどう相乗的に力を発揮していくことができるか、知恵や技法が必要だと考えています。そのためのレクチャーと実践をグループの幹部に対して行っています。

今は、社長からMGRまでが対話チームを作り、継続的に対話をしています。

コーチングや対話を普及するところの信念は、「ウェルビーイングの中核は良質な人間関係である」と考えているからです。コーチングや対話は、良質な人間関係を育む力になります。良質な人間関係があること、それを育て続けることが、働く社員が自分の能力を存分に発揮するためにも、そして協働力を最高にするためにも、不可欠だと思っています。ここに信念をもっていることがウィルグループらしいウェルビーイングへの取り組みかもしれません。

 

ーーー今後取り組んでいきたいことはありますか?

今後は、積極的な"越境"をグループ内で増やし、たくさんのつながりや絆をつくっていきたいです。

業務は当然組織図に基づいて進められ、部内で完結しますが、一人ひとりの社員がウィルグループの中に組織図を超えたいろいろなつながりを持つことができたら素敵だと思います。グループ内に複数の居場所があることがウェルビーイングにも通じると思います。
また、人は自分の境界をでたときにより多くを学べるし、視野も広がるし、腹もすわると思います。

同じ意味で、グループ外の人や組織とつながるサポートもしていきたいです。
 

「グループ横断で実施しているWell-beingについて学ぶワークショップ風景」

 

幸せを先送りせず、ウェルビーイングとビジネスを結合する

ーーーウェルビーイングの取り組みはゴールが見えづらいものだと思いますが、どういった目標をお持ちですか?

グループ全体としては、2030年までに我々という存在を通じて、世界中のより多くの人々の人生がウェルビーイングな状態であることを実現し支えていく、という壮大なコミットメントを掲げています。もちろん、2030年以降も続けるだろう終わりなき旅だと思っています。

そのためにも、まずは自分たちです。よく「人の面倒を見る前に自分達の面倒を見ようよ」と言っているんですけど、我々がウェルビーイングであることがクライアントさんやスタッフさんに対するポジティブな活動を生み出していくという考えを大切にしています。だから順序としては、まず社内。ウェルビーイングはすべての活動の土台です。

ちなみに、ウェルビーイングとは?というとどんな言葉を思い浮かべますか?

 

ーーー幸せとか、健康でしょうか?

実はウェルビーイングというのは明確な定義がない言葉なんです。

我々もウェルビーイング=幸せという理解で3年間取り組んでいました。
それによって何が起こっていたかというと、

「幸せって、一生懸命努力した後に得られるものだよね」と、ウェルビーイングが未来に先送りされてしまうんです。幸せになるためには、犠牲を強いてでも業績を達成しなければいけないということになってしまう。

また、幸せにはしんどいというイメージがないので、「ビジネスの現場ってしんどいよ?」という感情的なギャップを経験している人も多かったんですね。

すると、「しんどさの先にきっとウェルビーイングがあるはずだ」とこれまた先送りされる。ビジネスとウェルビーイングが分離してしまうんです。

そこで、ウェルビーイングをWHOの定義に合わせて
身体的・精神的・社会的に良好な状態
と理解することにしました。

すると、身体的・精神的・社会的に良好な状態だから良い仕事ができる、とウェルビーイングを常に今に置いておくことができるようにパラダイムが変わりました。

良い仕事をするためには、良い精神状態である必要があるし、良い身体の状態も必要だし、良い社会的状態=人間関係も必要。

ビジネスとウェルビーイングが統合されるところに立てたんです。

全社的にも、良いビジネスをしていくためにはウェルビーイングである必要があるよね。という理解が生まれ、広まりつつあります。

最近はスタッフさんが弊社のサービスを評価するNPSスコアも向上しています。我々の在りようが変化しているゆえに、活動の質が変わり、スタッフさんの評価もポジティブに変化しているのだと思っています。

ウェルビーイングのための貢献には様々な方法があると思いますが、人や社会と接触する機会においていかに我々がベストを尽くせるかがウェルビーイングを掲げた我々にとって大切な方向性だと考えています。

 

ーーーそんなウィルグループのカルチャーに合う方はどんな人でしょう?

自分の可能性を信じ、仲間の可能性を信じ、一緒にベストを尽くしていくことができる人です。

言い換えれば、自分たちの関係性にこそ大きな力があることを信じ、ともにチャレンジしていこうとする人です。
当社には「Believe in Your Possibility -可能性を信じる-」というコアバリューがあります。これは、まさにそのことを言っています。
「私にも、私たちにも、ムズカシイです」という制限的な選択ではなく、「いいですね。やってみましょう!」と自分や仲間の可能性を信じるところに立つこと。これを大切にできる人と働けると幸せです。

ワークショップ終了後、WILLの「W」のポーズで撮影する内定者(新卒)の写真

 

ーーー鳥谷部さんご自身の今後の目標はありますか?

もしウィルグループが100年誌をつくるならば、ウィルグループの持続可能なWell-beingの礎を整えた人、として記録される活動を重ねていきたいです。それは75年後のことですが。未来の人にとって、よい祖先でありたいです。

 

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