毎日食べたくなるラーメン「しお貫」店主が明かした、働き続けたくなる制度作りや従業員への想いとは
written by ダシマス編集部
道南で仕入れた真昆布や鶏ガラ、豚ガラ、そして新鮮な野菜などから丁寧に旨みを抽出し、透き通った黄金スープの函館ラーメンを提供しているのは、東京恵比寿にある「しお貫」。2008年7月に創業し、そのおいしさに多くのファンが魅了され、口コミサイトでも高評価を獲得しています。
今回お話を伺ったのは、そんな「しお貫」を創業し、自ら厨房に立ちながら経営まで一手に担う江澤正哲(えざわ まさのり)さん。「ラーメン屋の店主というと、独自のこだわりが強いのでは……?」というイメージを覆すような江澤さんが語る「しお貫」のたゆまぬ進化の裏側や従業員への想いとは。ラーメン店では珍しく感じられる福利厚生面での工夫についても取材しました。
店長:江澤 正哲(えざわ まさのり)さん
1985年生まれ。千葉県出身。大学卒業後ムジャキフーズに入社し、2010年しお貫の経営者として個人事業主へ。こだわらないことにこだわるをモットーに従業員とも対等に接する。
執筆:神田 佳恵(なりー)
フリーランスライター。"何気ない人生にスポットライトを当てる"をテーマに置き、インタビューを中心にイベントレポート・SNS・HPなど多分野にて執筆活動中。コミュニティ運営や編集アシスタントとしても従事し活動の幅を広げる。一児の母。夫と息子、note、推し、旅が好き。
「ラーメン屋の頑固親父にはなりたくなかった」経営目線で選んだラーメンの道
ーーまず、「しお貫」はどんなお店なのでしょうか。
函館ラーメンを提供するお店として恵比寿に店舗を構えています。当初は塩ラーメンからスタートし、味噌ラーメンや餃子など、商品のバリエーションも少しずつ増やしてきました。
ありがたいことに食べログなどのサイトで高評価をいただき、広告は打っていないのですが、お客様の口コミのおかげで売り上げも右肩上がりで成長しています。
ーー江澤さんが「しお貫」を創業するに至った経緯を伺ってよろしいでしょうか。
大学を卒業してムジャキフーズという飲食店経営を斡旋する企業に新卒で入社し、2年間正社員として働きました。当時はラーメン屋を始めたい、という思いはまったく抱いていなかったのですが、本社の方から「会社のサポートの元、ラーメン屋を営んでみないか?」と声をかけていただき、個人事業主として店舗を立ち上げたんです。
学生時代に飲食店でアルバイトをした経験があり、それがとても楽しかったのが背中を押してくれたポイントだったと思います。そのうえでラーメン屋は新規参入のハードルが低く、利益率も高いと感じたので「よし、やってみるか」と。
ーーラーメンにこだわってスタートしたわけではない、というのは意外でした。お仕事をしていく中で、ラーメンを選んでよかったな、と感じるポイントはありましたか。
売り上げが安定的なことや、思っていたよりも店舗運営や経営が難しくなかった部分ではよかったと感じています。私が不在の場合でもきちんと営業できるお店づくりを目指していたので、その点も「しお貫」では叶えられているのでよかったかなと。
ーーいわゆるラーメン店主さん的なこだわりよりも、経営者的な目線で考えたり判断することが多いのですか。
そうですね。働いてくれている従業員への給与を支払い続けなければならないし、家族を養う責任感も感じているので。私個人の「楽しい」とか「好き」とかの感情以上に、お店を守ることを意識して物事は判断するようにしています。
それによくイメージされるような、こだわりが強い「ラーメン屋の頑固親父」にはなりたくなかったんですよね。オーナーである私自身がどうあるかで、お店の空気はガラッと変わる。そう思ったときに、こだわりが強すぎるのも「しお貫」にとってはあまりよくないかなと思っています。
周囲に見えない進化へのこだわりが、「いつも変わらぬ味」を守り続ける
ーー最初に塩ラーメンを選んだのには、何か理由があったのでしょうか。
幅広い年齢層の方に愛されて、毎日食べても飽きない、むしろ毎日でも食べたいと思えるものを提供したいと思ったんです。こってりした味よりも、塩系のあっさりした味であればご年配の方でもお子様でも好んでいただける。お店の近くにお住まいの方にも長く愛していただくならば、塩系がいいかなと。
本社ともよく相談し、例えば豚骨系などの大手チェーンやライバルが多いジャンルよりも、塩系の方が安定的な売り上げを見込めるのではという判断のもとでもありましたね。現在は味噌ラーメンも提供しています。
ーー毎日でも食べたくなる味を実現するために、何かこだわっているポイントはありますか。
「いつも変わらない味」と感じていただき、継続してご来店いただくには、味がブレないのが大前提です。従業員には決まったレシピ通りに調理・提供してもらうよう徹底しています。
そのうえで、これは私だけで密かに行っていることなのですが、若干の味の変化を日々探求・実験し続けています。スープの材料の配合をわずかに変更してみたり、定期的に麺屋さんに新たにおいしいものがないか声をかけてみたり。
本当に常に同じ味のままでい続けると、お客様は「味が落ちた」と感じてしまう。基本の味のベースは守りつつ、なかなか気づけないような味の進化を地道に続けることで、いつも初めて食べたような感動を味わうことができ、それが「いつも変わらない味」と感じていただくことにつながると思っています。
ーー進化を続けることで「いつも変わらない味」を守り続けると。
そうですね。単純に、私自身がいつもおいしいと感じられる味を作り続けてきた結果とも言えますが。
大手企業に負けない仕組みづくりと、居心地のよい職場環境を
ーー先ほど経営を担う立場としての責任感などについてお話しいただきましたが、お休みの日などは仕事から離れてリラックスする瞬間もありますか。
基本店舗に入っていない日はオフとして切り替えています。私自身もしっかり休むときは休んで、従業員にも主体性を持って働いてもらうために、任せられることは思い切って任せていこうと考えているんです。
とはいえ、従業員からの連絡はいつでも確認できるようにしています。急な電話にヒヤッとする瞬間もありますよ(笑)。
ーーお一人おひとりに信頼を置いている証でもありますね。現在「しお貫」では何名の方が働いているのですか。
私と社員4名です。アルバイトの方よりも固定シフトを組みやすい正社員としての採用にこだわっています。長い方では10年以上、一番社歴の若い方でも3〜4年勤めてくださっています。
ーー従業員とのコミュニケーションで心がけていることは何でしょうか。
新しく入ってくださった方にはまず私自身がマンツーマンで教育をするようにし、緊張をほぐすためにも、仕事以外についての雑談も交えながら積極的に会話を図っています。どんな仕事でも始めから完璧にこなせる方はいないので、多くを望まず長い目で育成する気持ちで接していますね。
あとは、上からものを言わないようにも心掛けています。実は今働いているメンバーの中では、私が一番年下なんです。オーナーだからと高圧的になるのではなく、従業員に働いていただいている立場と考え、一人ひとりに敬意を払ってコミュニケーションするようにしています。
ーー従業員の方が気持ちよく働ける環境を積極的に築いているのですね。待遇面では、何か工夫されていることはありますか。
大手企業やチェーン店と同じレベルの福利厚生を確保するように意識しています。例えば年に一度の健康診断や、完全週休二日の制度などですね。勤務から半年で有給休暇を取得できるようにして、月に一度は三連休を取ってもらうなど、お休みの取りやすさにもこだわっています。
新型コロナの最盛期はお店を早めに閉めて営業していましたが、国の助成金もあり従業員には変わらない給与をお支払いしていました。経営者として、一度仲間になった社員がどうすれば長く勤めてくれるかを最優先に考えたことで、一人も退職者を出すことなくコロナ禍を乗り越えることができました。
ゆくゆくは、週休三日制の導入も検討しています。「もし自分が雇われる側だったら、仕事量に対してどれくらいの待遇があれば続けたいと思うか」が、福利厚生や待遇を整える基準なんです。
長く愛されるお店の秘訣は、どれだけ人を大切にできるか。未経験者も積極採用中
ーー引き続き、売り上げを右肩上がりで維持していくために大切にしていきたいことはありますか。
とにかく、人との繋がりは大切にしていきたいです。お客様はもちろん、従業員にも長く働き続けていただくことが不可欠ですし、お取引先や業者さん、テナントを貸してくださる大家さんまで……。
どれだけ人を大切にできるかが、商いの基本だと考えているんです。一人ひとりとのお付き合いが「しお貫」を支えてくださっていることを念頭に、これからも真摯に頑張っていきたいと思っています。
ーーこれから「しお貫」として取り組んでいきたいことを教えてください。
新しい社員の方をお迎えして、お店に新鮮な風が通るようにしたいです。将来的には店舗を増やしていきたいと考えているので、私が不在でも店舗を営業できるような店長クラスの育成も積極的に考えています。
やりがいを感じながら働いていただくためにも、ある程度の責任を担っていただく必要はあると思っているので。
ーーどんな方に加わってほしいと感じますか。
スキルや経験は求めないです。接客がお好きでやる気がある方ならどんな方でも大歓迎ですね。現在は従業員が全員男性なので、できれば女性も複数採用していきたいです。
ーー最後に、未来の仲間に向けてメッセージをお願いいたします!
ラーメン屋というと、立ちっぱなしで多忙なイメージを抱く方もいるかもしれませんが、意外とピークタイムを超えると落ち着いた時間もあり、メリハリのある働き方ができます。
「しお貫」は、従業員一人ひとりを大切にする職場です。ワークライフバランスを配慮し、楽しく長く勤めていただけるよう、福利厚生などの整備も第一に考えています。和気あいあいとした雰囲気で働ける職場だと思いますので、ご興味のある方はぜひ「しお貫」で一緒に働けたら嬉しいです。
しお貫の採用情報はこちらから
◆求人情報:https://hr-hacker.com/shiokan/job-offers