「初めて家を持つ人を応援したい」創業から32年、総合不動産会社社長が貫く思い
written by 川西里奈
「一生涯を不安なく快適に、家族と過ごしたい」というのは、誰もが抱く平凡な夢ではないでしょうか。今年で創業32年を迎える株式会社リビングライフでは、ライフステージに合わせた住宅サービスの提案を行っています。「初めて家を持つ人を応援したい」と話す炭谷社長に、創業時からこれまで大事にしてきた思いや、今後の展望についてお聞きしました。
炭谷 久雄(すみたに ひさお)
昭和21年4月富山県射水郡大門町(現・射水市)生まれ。重機ミシン工業会社、建築会社での勤務を経て、平成2年に株式会社リビングライフを設立。平成8年に株式会社東横建設の代表取締役に就任し、株式会社リビングセンターを設立。平成18年に朝日建設株式会社をリビングライフの子会社として設立。平成19年に株式会社リビングコミュニティ、平成28年に株式会社リビング建設を設立し、両社の代表取締役に就任する。
ニーズに合わせた住宅提案で、幸せの実現をサポート
__リビングライフとは、どんなことをされている会社なのでしょうか。
炭谷久雄社長(以下、炭谷):「住まいから始まる幸せの生涯設計」という精神を軸とした総合不動産会社です。住宅流通事業、ディベロップメント事業、建設事業、賃貸事業、コインパーキング事業、マンション管理事業など、幅広いお客様のご要望にワンストップでお応えできるように展開してきました。
__「住まいから始まる幸せの生涯設計」を会社の軸とする考え方にしたのはなぜなのでしょう。
炭谷:人の一生と住まいの問題は切り離せません。私の考える幸せとは、自分の所有する家に家族が集まり過ごすことです。賃貸住まいの人の場合でも「いつかは自分の家を持ちたい」という思いを少なからず抱いているのではないでしょうか。特に私は「初めて家を持つ人を応援したい」という思いを創業当時から持ち続けてきました。
弊社が事業展開しているのは、東京の城南地域から神奈川・横浜・横須賀といった人気の高いエリアです。このエリアで年収300万円〜400万円の若い世代の方に対し条件に合う物件を提供するのはかなり難しいことですが、私はこの使命を果たすために不動産業を続けてきました。
__たしかに、人気エリアで若い世代への住宅を提案し続けるのはむずかしそうです。具体的にはどういった住宅の提案を行っているのでしょうか。
炭谷:若い世代への提案のひとつとして、分譲マンションの「リリファ」というシリーズがあります。創業20周年を迎えた2010年より展開している事業で、企業の社宅を一括して買い取りリノベーションを施して再販しています。好立地の社宅はファミリー向けの間取りのものも多く、リノベーションすれば見た目は新築とほぼ変わりません。しかも、新築よりも2割程度安くご提供できます。機能性・快適性も高く戸数も多く提供できるため、お客様からの満足度も高く、ご好評いただいています。
目標を明確に持つことで、人生は豊かになる
__炭谷社長の著書を拝見させていただきましたが、創業期には不動産バブルの崩壊、新事業の拡大のさなかでのリーマンショックなど、苦難の中でも不動産業界で続けて来られたのはなぜだったのでしょう?
炭谷:たしかに、1989年にリビングライフを設立してからバブルは崩壊し、数年間は苦しい時が続きました。しかしその後、混乱を極めた不動産市場もようやく落ち着きはじめ、1995年には初めて大卒の新卒採用をし、翌年には念願だった本社ビルも完成しました。またリーマンショック時に出た赤字は約13億円ありましたが、通常10年以上かけて返済していくところを、3年で完済することができました。
私がこれまで逆境の中でも諦めずにやってこられたのは、私のこれまでの生い立ちが影響しているのだと思います。私が3歳の頃に父は亡くなったと聞いています。その後は母が紡績工場で働き、幼い私は祖母に育てられました。母のおかげで経済的な苦労を味わうことはなかったですが、どこか寂しさを感じていましたね。
そういった背景もあり「家族の幸せを大事にしたい」という強い思いが培われ、それが「マイホームを購入して家族みんなで幸せな生活を送る人を増やしたい」という夢を持ち続ける根拠になっていきました。
__その思いが強くなり、独立するまでに至ったのですね。
炭谷:バブル崩壊後までの不動産業界はどうしても、お金儲け優先の考え方が多かったのですが、私はそういった経営者とは何か違うなと感じていました。もちろん利益は上げていかなくてはいけませんが、私が最も大切にしているのは「社員が幸せであること」です。
独立を考えていた頃、北海道の住宅総合会社である土屋ホームの創業者・土屋公三氏の「3KM(スリーケーエム)」という人生哲学に出合いました。「3K」は「個人」「会社」「家庭」という幸福を実現すべき3つの領域のことで、それぞれに「3M」となる「目標(マーク)」を持ち、それを「管理(マネジメント)」し、実現に向けて「意欲(モチベーション)」を引き出すことを意味します。
私自身これを踏まえ、ノートに人生設計を書き出すことで、漠然としていた人生の目標がクリアになりました。個人、家庭、会社の幸福に貢献することを人生の目標とする人たちで組織をつくり、住まいを通じた幸せの生涯設計をお客様に提供する、そんな会社をつくりたいと願いました。
__人生の目標をさまざまな視点から明確にする必要があるのですね。
炭谷:人は表面的な能力通りの人生を送るケースは稀で、その能力をいかに発揮できるかによって自分の人生を豊かにすることができるのだと思います。その差は「自分はこうありたい」と強く望むこと。そこに向かって努力をすることです。
リビングライフでは社員全員に「個人、家庭、会社の目標」を書いて提出してもらっています。1年後の個人の目標を20個、家庭での目標を20個、会社での目標を20個記入し、さらに3年後、10年後、20年後の目標についても記入します。毎年240個の目標を記入することになるのですが、歳を重ねてからこれを振り返ることで、自分の人生の意味を見つめ直す機会を持つことができると思います。
変化する時代を見据えた新たな挑戦
__地元富山県に対する思いを教えてください。
炭谷:富山県を含めて、地方が活性化することはこれからの日本の経済発展に大きく影響していくと思います。私の卒業した富山県射水市の小杉高等高校は「眼を天に向け、人間として教養を高める青年の輩出することを念願」し、103年前に開校されました。富山県では、薬学専門校、農学校、工芸高校、商業高校など、教育の成果を実社会に活かせるような教育をする学校が多く、小杉高校もその一つです。これからも富山県出身の偉大な諸先輩方のように、目標を持ってその実現へと向かう人材が育まれていくと良いですね。
__社長の夢はなんでしょうか。
炭谷:私個人としては、ピースボートに乗って世界一周することや、全国の鉄道や神社、お寺、お祭りを見て周りたいという夢がありますね。70歳からが第二の人生だと思っています。これからも健康に過ごし会社経営を通してまだまだ社会に貢献したいです。
会社としては「初めて家を持つ人を応援する」というのがこれからも変わらない目標です。世の中は常に変化していますから、時代のニーズに合ったサービスの提供が必要です。不動産業でもマンションしかやっていない、建築しかやっていないとなると景気に左右されてしまいます。伸びている会社は本業を活かしながら業種を広げている会社だと思います。新しい分野にも挑戦しながら、利益よりも「人が豊かに生きていくために必要なもの」を優先して提供し続けていきたいと思います。
取材を終えて
炭谷社長のお話からは、不動産業を通して人々の幸せの実現をサポートしたいという創業時から貫く熱い思いを知ることができました。住宅とはどんな時代にも人々に必要とされるものです。変化するニーズに合わせて新たな事業を展開するリビングライフ。今後の発展が楽しみです。